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塾員インタビュー #12
■株式会社イレギュラーズアンドパートナーズ
 代表取締役社長
 山本一郎さん(切込隊長) Part3
イレギュラーズアンドパートナーズ 代表取締役社長 山本一郎さん

ネット界にその名を轟かせる「切込隊長」、山本一郎氏。
個人投資家にして、ゲームやインターネット関連企画のプランナーでもある。 有名インターネット掲示板である「2ちゃんねる」の創設にも関わり、 現在は人気週刊誌「週刊SPA」などに連載を行うという凄まじく多彩な顔を持つ。
今回はそんな山本氏に、在籍時代を思い出しながら、 「慶應」について辛口で切り込んで頂いた。
今の大学生には考えられないほど波乱万丈な大学生活を送った彼の話は、 その切り口がとても鋭く、考えさせられるところが非常に多いだろう。

ジャーナル編集部も驚いた彼独特の辛辣なコメントを、ご堪能していただきたい。

■切込隊長BLOG(ブログ)〜俺様キングダム〜
http://kiri.jblog.org/
■イレギュラーズアンドパートナーズ株式会社
http://www.i--p.com/



■隊長の目指す生き方

―隊長の目指す生き方は?
あのね、僕ねー、あんまり人の上に立つ器じゃないんですよ。 ネガティブなこと言いますけど。

自治会でも、非常に優秀なっていうか、三田貴良君という本当に政治家のボスみたいなヤツがいて、 彼が「これやるぞーー」って言うと、皆「わーっ」てやらなきゃいけない。 僕は、その時に「こうやったらできますよ」って示唆するタイプの人間。 No.2か、No.3か、いわば実務屋に近いんです。 僕自身は、誰かに使われてようやく才能が発揮できるタイプなんです。実は。

勿論、僕自身も切実な事情でカネ儲けたいと思っていたけど、それは自分でやってなんとかなった。 でも僕という人間の本質からすると「何かをしたい」と思っている 人の願いを実現させる事に非常に能力がある。

まあ僕自身はナイフみたいな物なんで。 「いいナイフ使いを探す」というか、 「いい親玉」を探すって言うのがまあ僕の人生の目標ですね。

切れ味はある程度は保証できるんですけど、 ナイフとしては間違った使い方をして欲しくないというか、 人を刺して欲しくない思うんですね。 できれば梨とかリンゴとかを剥いて欲しいっていうのがあるので。

―親玉候補は、見つかりそうですか?
いや分かんない。その旅をしてます。 それこそ自分が経済的になんとかなって、 27,8の時位からずっと探し続けて5,6年は 経ってますけどそう簡単に見つかるもんじゃないっすよね。

ただやっぱり自分の能力っていうのは誰かが何かをしたいと思った時に 「それがどうやったら実現できるか」を考えて着実に実行する事だと思うので。 別に自分自身が何かしたいという事はほとんど思わない。 まあそういった意味で言うと、なるだけ良い親玉探してえなあ、というのがありますね。

切込隊長

―ある意味傭兵?
傭兵ですね。悪く言うとね。いや、悪くないか別に。 まあ傭兵ですよ。いい親玉に雇われてえなと。

良いビジョンがあったり、良い目論見であったり、 そういうのに関与するのが自分にとって一番喜びなんで。

「こういう事をやりたい」 と誰かが思った時に 「こうしたらできますよ」 「こうすれば確率あがりますよ」 「それはやめたほうがいいですよ」、 そういった物をサジェスチョンする立場に僕自身は非常に向いているので、 なるべく人の一番上に立つ事なく、参謀役というかハンドリング役というか、 そういったポジションをなんとかみつけていきてえなあと。

大体こう、僕みたいなポジションは、困ってる人と、何か始めたいって人には すごく頼られるんすけど、上手く行くと「おまえもうお疲れ様でした」って感じになるんですよ。 いや、本当に。

うまくいってる人は、傭兵使わずに中の人材で賄えるんで、オファーは来ないと。 ウチみたいな所に来るのは負け組みか、これから始めようとする力の無い人。 で、そういう人達が力を付けて行く過程の中で 「山本さんありがとうございました! またよろしくお願いします!」 とか言われてまた切られる、と。

それの繰り返しですね。 職業倫理上、虚しいと思っちゃいけないにしても、 それが自分の役割として最適なのかなあと思ってしまう部分もありますよ。

いや困った時とか、問題起きる時はよく来ますよ。ほんっとに。 火消しと言うかいかだというか。

【関連リンク】
「いかだ」 http://kiri.jblog.org/archives/001443.html

■隊長のネットライフ

―突然見ず知らずの人から送られてくる相談メールにも返信していらっしゃる、という事ですが…
比較的しますね。 何か声が上がってるって事は、その人がその人なりに 最大限の成果を得ようとして、しかし自分ではどうにもならないから、 僕の様な、見ず知らずの他人に相談を持ちかけていると。 その人なりに、最大のハードルを超えて質問とか相談がきているんですよ。

勿論僕からすると「なんで知らないやつから相談をうけなきゃならんのだ」と思う時もあるんですけど、 ただ、その人の現段階での『精一杯』を否定する気には絶対なれないんですよ。 その人は例えば、消費者金融20万円にひっかかってる。で、どうしても返せない。 「20万円ごときで悩んでるのかお前。おまえの価値は一体いくらだ」と思うんですけど、 でもその人は、20万円がクリアできなくて物凄く悩んで逡巡して、 色んな人に相談して回って、どうしようも無くようやくこっちに来てる訳なんですよ。 それをバーンって否定したら、その人可哀想じゃないすか。

その人も、今はそんな事で悩んでいても将来どう化けるか分からないし、 それに答えるのはいくらの労力もかかんない。 20万円で悩んでいるんだったらこうすればとりあえず目先は大丈夫ですよ、 というのはいくらでも教える事は出来ると。 それでお金とる気は毛頭ないです。

まあそういった意味で、答えてあげて損はないのかなぁ・・・というか、 相手の「精一杯」を感じ取る事が出来る以上は、 きちんと答えてあげていいのかなって思いますよ。

一番重いのでは 「僕ヒキコモリなんですが、インターQ解約するのに 電話しなくちゃいけないんですがどうしたらいいでしょう」 ってそういう質問が来るわけですよ。

で、それに 「いや、頑張って電話してみよう」 「それは君が家から出られる第一歩になるかもしれないから、 とりあえずハードル高めていきましょう」と言う話を返すわけですよ。

その人からすると電話かけるのはすごい精神的苦労で、 でもメールはできるんですよね。 でもメールではインターQが解約できない、と。 だから物凄く悩んでるわけですよ。電話する恐怖から逃れようとして。 でも、それがその人の精一杯である以上は、 その精一杯に対して適切なアドバイスをあげる事が 最大のソリューションである筈なんで、メールを返します。

―一日に何通位メールが来るんですか?
スパム除いて多分350通とかで、でも返すのは、 勿論返信しなくてもよいのもあるしその半分くらいですかね。

―普段いつ寝てるんですか?
まあ朝とか。夜はだいたい相場見てますからね。 そういった意味でいうと、本当に寝る時間は3、4時間くらいですか。 ネット全体にかけてる時間もせいぜい4時間くらいですよ。メールとか。

切込隊長

―一般に思われてるよりは少ないですね
なんか、ずっとネットに貼り付いている様な、 そんな見られ方するんですがそんな事は全く無い。

ずっとパソコン持ち歩いているからっていうのもあるんですが、 むしろ移動中とか、そういう時にBlog気晴らしに更新してみたりとかですね。

―隊長にとってBlogは気晴らしみたいな物ですか?
だってあれで別にどうにかなる訳じゃないじゃないですか。自分の人生。 みんなネットを過剰に考えてると思うんすけど、 ネットって所詮は電話とかファックスとか、昔の人においてのテレックスとかと、あんまりかわらない。 要は自分の感情や情報、思いを伝える手段にすぎないのであって、 それ自体がその人の人生を劇的に変えるとかって事はまず有り得ない訳ですよ。 なんか最近「Blogで金が儲かる」とかいう本が出てる訳ですが、おまえ本気で言ってるのかそれ、と。 まあそういうのもあるんすけど、ただまあなんというのかな、 渾身の力をかけてBlogを更新する必要はどこにもないと。 だけど、ある程度自分の「鮮度」であるとか、 面白がられ方をしない限りは、人は集まらないし読んでもらえないと。

だから、ブログ書くのに頭を使う必要はあるけど時間を使う必要はほとんどない、 というのが今の自分の立ち位置なんですよね。勿論考えて書く事は書くんですよ。 ここまで書いたらたぶん訴えられるからこの位にしとこう、とかはありますけど。 長文書く時なんかは大体、他に納品しようと思って3種類くらい書いたうちの1種類を どうせ使わないんだったらネットに上げとこうというケースなんですよ。 でも別にそれはネットのために書いてるわけじゃない。 よく誤解されてるけど。 一体何時間ネットやってるのかと聞かれて「いややってねーんだけどな」と。

―じゃああれはリサイクルみたいな感じなんですか?
いやもう、自分は納品をするために一生懸命書いた物なんですよ。 自分なりに知ってることを網羅して、それなりの内容で書いてると。 それは当然お金を取るべきものとして書いた。 ただ納品先の問題で、3本要求したけど実際2本しか使えないと。 1本あまる訳じゃないですか。 それって、自分のハードディスクに貯めといてもしょうがない訳ですよ。 だったら色んな人に見てもらって、叩いてもらって・・・ で、反応を見て 自分の意見に「ああまだ足りないな」「分かり辛いな」って部分があったら 指摘してもらえる訳じゃないですか。 だから公開してるんですよ。で、コメントが400とかつくわけですよ。

そういう事なんで、決して自分の生活の中心にネットがあるわけじゃないんです。 ブログ作って、使って、じゃあそれが自分の所得とか収益とか 他の人の幸せに貢献できるかっていうと別にそんな事はないと。

ただ、浪費すること自体が罪悪であるかというと、別にそういう事は全くなくて、 人間ってのは合理性のみに生きてる訳ではないですからね。

自分でできる範囲で、きちんとメディア…というかブログを、 回していくっていうのは気分転換にはなるからって事で書いていると。 本当に忙しいと書く暇ないですからね。実際。

―あくまで主点は現実世界の仕事などにおいていらっしゃるという事ですか?
ええ。勿論それは。

―「切込隊長Blogの山本一郎」っていう事ではない訳ですね。
自分が矛盾抱えてやっているので、いつ辞めようかと考えてやってるわけですよ。

それはその… なんていうかな。 インターネットのエントロピーは収束に向かっていて、夢のない世界になってく訳ですよ。 いわゆる一般社会に組み込まれていくプロセスのなかに入ってる。 で、あと5年は続くだろうと思ってるんですけど。結局どうこうなるかはわかんない。 でも、その幕をどう引くか、どこを落とし所にするか、ってのは考えますよね。 いつまでも誹謗中傷してるわけにはいかないですからね。

あと自分が病気したってのもありますけどね。 いま頭に病気が… こう、石が入ってる。 なんか石灰が頭に見つかって。

―偏頭痛?
いや、偏頭痛ではなくて、もともと脳が奇形だったんですよ。変な話なんですけど。 医者に「あんたの脳、変だよ」と言われて「うそーん」って。 最初脳腫瘍と言われて泣きそうだったんですけど、脳腫瘍じゃなかったって。 脳腫瘍だったら死んでたかもしれないんですけど、まあ石だったので。 それが破裂したら死ぬかもしれんですけど、破裂する可能性は、 おれ運いいからねえだろうって勝手に思ってるんですね。 まあ精一杯生きようってそんな感じですか。 まそういった意味で、こう、いつ死んでもいいようにっていうような考えはありますよね。

年間で破裂する確率が6パーセントくらいと。 あと確率の問題なので、別にすぐ死ぬわけではないんですけどね。

―…高いですね。
いやだから、でも94%セーフならそっちですよ。 もうこう頑張って94%ですよ。こうサイコロ振って。それはもう94%選んで手術しねーって。 「手術して2割死ぬんだったら年間6%のリスク受けよう」ってそんな感じですね。 あと低血圧なんですよね。だから破裂しねえだろうって。 都合のいい情報を出して安心してるっていう(笑) そんなとこですかねえー

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取材   坪井直紀
吉川英徳
萩原翔一



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