> 慶應ジャーナル > インタビュー記事 > 塾員インタビュー#15
塾員インタビュー #15
■日本テレビアナウンサー
 望月浩平さん

生年月日 1980年6月18日
出身地 静岡県清水市(現静岡市)
最終学歴 慶應義塾大学文学部

現在の主な担当番組
さきどり!Navi 水・木 10:30〜11:25

鈴江奈々アナウンサーはこちら




―大学生時代はどんな学生でしたか?

 高校から軟式テニスをやっていたので、そのままテニスサークルに入っていました。特別しっかりやっているわけでもなく、普通の部員でしたよ。飲み会や麻雀に行ったり、学年が上になるとそっちの割合の方が増えて…。専攻は文学部の人間科学で、小林ポオル先生のゼミでした。卒論は、人間が言葉を覚える過程、自分を認識していく過程をテーマにしました。

―そのテーマはアナウンサーになるのが決まったことからですか?

 あー、そういうところはあるかもしれませんね。言葉を使って人に見られることを職業にするわけですから。今まで、そういう環境に全くいなかったので。

―広告学研究会やメディアコムにも入っていなかった?

 そうです。そういうのが全くなかったです。


―では、なぜアナウンサーを志望されたのですか?

 最初はテレビに関わる仕事がしたいなと思っていて、アナウンサーになれるとは思っていなかったんですよ。雰囲気を見てみよっかなという気分で、アナウンサー試験を受けて。周りの人たちを見ながら、「あーこういう人たちがアナウンサーになるんだろうな〜」と思っていました。逆に自分は気楽に受けていたのがよかったかもしれません。ただ、アナウンサーになれるとは思ってなかったですけど、テレビ局には絶対に受かると思いこんでいました。「だめだったら…」とは考えていなかったです。テレビ局には受かるものだと。


―そういう人の合格は珍しいんじゃないですか

 珍しいでしょうかねぇ。アナウンサースクールにも行っていなくて。でも、その代わりかもしれませんが、とにかくテレビは沢山見ていましたね。そのおかげで、面接でテレビ独特の「ノリの良さ」みたいなモノを発揮できるようになったのかなと思っています。でも、御存知のように同期が、甲子園で18回松坂投手と投げ合った上重君や、ミス慶應の鈴江さんですから、そんな中で自分みたいな凡人がいていいのかと、決まってからの方がむしろ悩みましたね。プレッシャーも感じました。

―アナウンサーになる前には、そういう特別な人へのコンプレックスは感じなかったのですか

 そうですね、感じなかったです。ただ、アナウンサーになってからのために、余裕があるなら鼻濁音や腹式呼吸などのアナウンスの基礎は習っておいた方がいいと、今になって思います。でも、アナウンサーになるために特別なことが必要かというと、それは必ずしも正解ではないと思っていました。それは、テレビを見ている人の大半は「普通の人たち」だからです。ただ、「普通であることを表現できる人」がいいと思うんです。難しいですが…。私も、今それを模索しています。「近所に住んでいるお兄さん」みたいな雰囲気を、いかに表現するか。

 それよりも大事なことは、テレビを好きなことです。24時間ずっと見ていても飽きないほどテレビが好きだったら、それも一つの立派な才能だと思います。

 あと、共同作業をしていく力と緊張を克服する強さを持つこと。番組は何十人もの人が支えて下さっている。そういう人達と協力して一つのものを作っていく力です。皆さんが努力して築きあげたものを、僕のミス一つで壊すわけにはいかないですから。そのプレッシャーを克服する力ですね。僕もデビューの時は緊張したんですけど、緊張してもいいんですよ。仕事は馴れ合いでやっているわけじゃないので、緊張感は必要です。その中で、如何に緊張を悟られないようにパフォーマンスをしていくかが大事なことです。
 そして、あまり、奇をてらわない方がいいと思います。魅力的な自己紹介と、なぜテレビ局に入りたいのか、そしてテレビ局で何がしたいのか、この3つが他の人より魅力的であれば、試験はいいところまでいくと勝手に思っていました。でも、それって本質的なことじゃないですか。

―これまでのお話を聞いていて、望月さんはテレビが好きなことへのこだわりなど、自分と自分の考えを信じる力が強いなと感じたんですが

 就職活動中は凄くナーバスになって、色んな情報がありすぎて全部を信じようとしちゃうんですよね。僕はそういう性格じゃなくて、受験勉強でも、参考書をこれと決めたらその一冊だけ徹底的にやるような。だから、テレビが好きだから好きだって徹底できる。最初にこれ良いなっておもったら、それを信じて突き進む、よい意味での思い込みって必要なのかなと思います。ただ、進む道をまちがえた時にアドバイスしてくれる人は持っておいたほうがいいかなと思います。友達でも家族でも。


―では、好きが高じてアナウンサーになってしまうほどのテレビの魅力とは?

 色んな感情を疑似体験できることだと思うんです。テレビをつければ、そこに泣いている人や笑っている人がいて、自分もそれを見ることによってその感情を味わうことができる。本当に面白いなって思います。学生時代も今も、家に帰ったら何よりも先にテレビをつけます。勉強している時も、後ろでテレビが流れていないと嫌だったんです。


―それほど好きなことを職業として、これで飯を食おうと思ったのはなぜですか?

 難しいですね。特別なきっかけはないんですけど、就職のことを考えたら「やっぱりテレビしかないだろう」と。同じマスコミでも新聞や雑誌は考えていなかったです。


―テレビが好きってだけでポーンとアナウンサーになってしまった

 そうです。そんな感じで、これじゃ軽いですかね(笑)でも、理屈っぽく考えちゃう人よりも、突発的に何かできる人のほうがいいような気がします。
 他局の入社試験のエピソードなんですが、その場でテーマを与えられて1分間ほど喋るという面接がありました。僕の前の人が「狂牛病」というテーマで、その人は「牛の脳がうんたらかんたら」と解説を始めてしどろもどろになっちゃって。で、僕のテーマは「肉骨粉」だったんですが、これで何しゃべればいいんだ!?と思ったので、開き直って「肉骨粉は牛乳に混ぜるとおいしいんですよ。」とか「便秘にも聞くんですよ。」と思いつくまま1分間つないだんです。そうしたら僕が残っちゃって、、、これ参考になるのかな(笑)とにかく、余り意識せずに、奇をてらわずに、勢いでしゃべるくらいの度胸がないとね。 ―では、学生時代に戻ったら何をしたいですか?

 甲子園で18回投げてみたいです(笑)。というのも、自分は何も無いですから。そういう「何か」が僕には無いままアナウンサーになってしまったので。でも、ひょっとしたら僕にも「何か」があって、アナウンサーになれたのかもしれない。でも、それが何なのかは今の僕自身には分からないのです。


―その「何か」とは普通さですか?

 わかりません。でもそういう自分が、アナウンサーとして自分をどう表現するか、それは模索している最中であり、試している最中です。


―では、普通の学生にアドバイスをするなら
 普通であるというだけではなく、普通であることをどう表現するかです。


―普通であることを個性にするということですか

 そうです。でも難しいですよね。矛盾しているし、深く考えればキリが無い。考え過ぎるくらいだったら、いっそ何も考えない方がマシですよ。


―今、就職というと金融だったら金融のゼミを出ていなきゃとか、外資ならインターンしなきゃとか、特別なことをしていなければという風潮がありますが、「普通であることが個性」とは他の職業でも応用できますか

 できると思います。特別なことが売りとしてあるなら、あるに越したことはいですけど、自分に何にもないと思うなら、それで勝負するしかないですから。就職試験って「告白」と同じで、自分はこんな人間ですと分かってもらって、そしてあなたの会社が好きで入りたいです、私を雇うとこんな良いことがありますと、それを表現する場ですから。何故その会社に入りたいのか、何をしたいのかを魅力的にアピールすることが大事です。何も無いというのはマイナスではなく、だからこそのプラスの魅力を表現する。それは決して嘘をついていることじゃないんです。


―それでは、塾生に対してメッセージを

 普通の生活の中から面白いことを見つけてください。同じ100メートルを歩くでも、他の人より沢山のことを見つけて、それを口に出して表現できるような、そういう人になって欲しいと思います。あのおばちゃん派手な服着ているなとか、このアスファルトここだけ色褪せているなとか、何でもいいんです。その方が、人生楽しいじゃないですか。


―慶應に入ってよかったなと思うことは?

 他の大学の事はもちろん知らないですけど、とにかく色んな個性の人がいることです。だから、なるべく交友関係を広げていった方が良いと思います。本当に慶應にいてよかったなと思います。


―先ほどの100メートル歩く話と同じで、クラスで普通の人が10人友達を作るなら、自分は30人作るとか?

 そうです。それが出来るかどうかだと思います。慶應って本当にいい大学ですよ。


取材   村井裕一郎
 南郷史朗



塾生・塾員インタビューTOPへ | 慶應ジャーナルTOPへ