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塾生インタビュー #5
■colkinikhaデザイナー, モデル
 酒井景都さん(環境情報学部ニ年)

コルキニカという国をご存知だろうか。

それは、ロシアの近くにある、
国土は小さく、気温は平均14℃という寒い、
社会主義の国。

この小さな国の中には
幾つもの村があり、
空の色がグレイの日も、
雪の日も、
心は暖かく暮らしている
コルキニカ人がいる。
コルキニカの少女たちの普段着を、
身に纏うとどんな気持ちになるのかな・・・
(colkinikhaHP http://matild.com/colkinikha/ より 一部改)




自分をアピールする手段は、紙だけじゃなくて、 音とかビジュアルでもいいんじゃないかな。



そんな想像を膨らませながら、
デザイナー酒井景都は一着一着colkinikhaの服を作っていく。

やさしい色使いで
彼女の身体のように脆く、
けれども凛とした線がどの服にも印象的である。

イギリスアンティーク屋の家に生まれ、
中学高校時代6年間デッサンを学び、
子供の頃から絵本作家を目指していた。

しかしある時、ふと景都は思った。
「自分をアピールする手段は、紙だけじゃなくて、音とかビジュアルでもいいんじゃないかな。」と。

芸大への進学を辞め、
慶応の環境情報学部でデザイン言語といった先端技術を学ぶことを決めた。

olive専属モデルを経て、モデル業7年。
それに加えて、2003年に自ら立ち上げたブランドcolkinikhaでのデザイナーの仕事。

SFCには週に三日通い、週三日は代官山の事務所で服の制作、そして週一でモデルの仕事をこなす。
「自分が3人くらいいたらいいのに!」時間に追われる毎日。

さぞや授業はなおざりでは?と踏んで切り込んでみたら、
「それが授業はなんか休めなくて、ほとんど全部出てるんです。心理学にも興味があります。それと将来は自分でショップを経営したいから経営学の授業も最近面白くって!SFC に入学した頃はまさか自分が経営学を学ぶとは思ってもいませんでした」

でもつまらない授業だってあるでしょう?とさらに意地悪く食いつく。
「そんな授業中にね、どんどんデザインが浮かんでくるんです。昨日の経済の授業では来年の春物全部決まりました。(笑)」

そういってびっしりと綿密なデッサンの描かれた紙を、テーブルの上に広げて見せてくれた。退屈な授業時間も景都の手にかかればこんな風に生命を与えられるのか。



ファッションを軸に生きていこう


「ファッションを軸に生きていこう」
そう景都が思えるのはファッションに様々な媒体の可能性を感じているから。

例えば、年に2回行うコレクションの展示会。
ギャラリーや、時には洋書屋を借りて行うその場において景都は、カタログや空間プロデュース、音やディズプレイの範囲に至るまで、すべて自ら手掛けるほどのこだわりをみせる。気になる店のバイヤーには直接声を掛けて会場に足を運んでもらい、バイヤーの目に留まればそこでマッチング成立となる。以前のように自分からここぞという店に「直談判」でcolkinikhaの商品を持参し交渉する営業も欠かさない。華奢なその身体の一体どこにそんなパワーが潜んでいるのか。
さらに、「いつかはファッションショーをやるのが自分の集大成だと思っています。」
と、大きな瞳の視線の先は、常に高い目標を捉えている。現在colkinikhaブランドを置く店は全国に40近くまでに広がり、さらに増加中である。



妄想を形にする力!

 そんなプロの仕事人、酒井景都に慶応のSFCで学ぶ魅力とは何なのか聞いてみた。
「がんばりやさんが多い。自分と違う才能をもった友達がたくさんいるから、コラボができるんです。たとえば今ファッションと音楽の融合を試みているんですが、イメージとメロディを双方から出し合ってひとつのサウンドを創り出す、交換日記のように順々に回していって。自分のできないところはそのプロである友達に任せちゃうんです。」

しかしどうすれば景都のように輝けるのか。
「まず自分なりの国を見つけること。どこの国が好きか、何の国が好きかつきつめて考えてみる。そして地球儀に、自分の国をつくってみるんです。」

戸惑う我々に気づき、やさしい言葉を探す。
「つまり一個媒体を決める。写真でもいい、俺は手袋一筋!とかでもいい。とにかく誰も手をつけていない分野でのところでスペシャリストを目指すことだと思います。」

そうはいっても・・・と及び腰になる我々に止めの一言。
「妄想を形にする力!」


酒井景都の妄想はSFCの現代先端技術の力を借りて、コルキニカという国を誕生させた。



この悪戯な妖精は、、、本当に可愛い。


ディズニーから依頼を受け、9/26から目黒で開かれるアートイベントDisney Labo Tokyoにティンカーベルをモチーフにした作品を発表する。魔法の呪文を唱えると、音楽が流れ出し、さらにドレス型のプロジェクターにティンカーベルが魔法をかけると、洋服のテキスタイル(模様)が変動するという作品だ。

目下その製作に大忙し、休日はない。

でももし休みがもらえてどこか旅行できるとしたら?
「アイスランドかスイスかなあ。寒い11月とかに。北欧は一ヶ月くらい前から私の中でブームなんです。スイスは、、エビアンのパッケージにあるようなアルプスを遠くから眺めてみたいから。」

いかにもその澄んだ大きな瞳と、妖精のように白く繊細な彼女のイメージにぴったりだ・・・と一同深く頷いた瞬間、
「でも実はハワイだったりして、ね。(笑)」

この悪戯な妖精は、、、本当に可愛い。 【colkinikha取り扱い店】

新宿伊勢丹解放区
ラフォーレ原宿3Fカルネ
アナザエディションetc.



取材   岩原日有子



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