自分自身を楽曲にそのままぶつけられる
―なぜ歌手になろうと思ったきっかけは?中学生くらいの時に聴いたdrug store cowboy(※1)のアルバム「Masterpeace」が、それまで鬱屈していた自分を変えてくれました。その頃は学校の友達や家族と折り合いが悪く、自分の居場所がないと感じていました。でもロックに出会って、周りに合わせたりする必要はない、自分らしくいて良いんだ、とわかってからやっと息ができるようになったんです。そんな風に人を支えることのできる音楽というものを自分の手で創ってみたいと思ったからです。
※1 drug store cowboy:邦楽バンド、2004年から活動停止。
―シンガーソングライターってどういう人のことですか?
自分で詞も曲も書くことによって、気持ちや考えをよりリアルに伝えるアーティストがシンガーソングライターだと思います。ただ商業的に耳あたりが良い言葉やメロディを歌うのではなくて、自分自身を楽曲にそのままぶつけられるところが強みだと私は考えています。
―作曲はどうしていますか?そもそもどうやるんですか??
家でギターを弾きながらなんとなく歌って、良い感じのフレーズが出てきたらそれを広げていきます。鼻歌で流れを作ったりギターやピアノでコードを展開させたりと場合によってまちまちです。
―作詞はどういうときにしますか?
人との会話や、本、映画など、いろんなところからヒントを得ていますが、一つの詞を組み立てるときはまずテーマ、つまりその曲の中で一番伝えたいことを決めます。それを中心に曲全体の景色やストーリーを膨らませていきます。
―音楽を通して遼花さんは何を伝えたいんですか?
強く自分らしく生きることです。自分らしく生きようとする人は必ず壁にぶつかるし、傷つくし邪魔だってされます。その過程での挫折や失敗やカッコ悪い部分も、隠さずに表現していきたいです。
孤独や痛みをすべて力に変えていこう
次は、遼花さんの新曲『君の味方』について聞いていきます。―『君の味方』にはどのような思いが込められていて、どのような状況にいる人に聴いて欲しいのですか?
―どういう時にどういう気持ちでこの詞を書きました?
この詞を書いたのは去年の夏頃です。辛い経験をした友人から話を聞いて、今苦しい状況にいるすべての人に向けた曲を書きたいと思ったのがきっかけです。そんな気持ちを「君の味方」という言葉に託しました。
―遼花さんにとって、最も心の支えになっている「味方」は誰ですか?
友人です。何も言わなくても、見守ってくれているだけでも、友人は私にとっていつも心強い存在です。
―AllisterのScott Murphy(※2)氏とのコラボレーションに至る経緯と新曲制作中印象に残ったこと、大変だったことを教えてください。
Scottとはもともと知り合いではなくてディレクターの紹介がきっかけだったんですけれど、Scottさんが大の日本好きで日本語も話せるということにまず驚きました。作品を聴かせてもらったところ、イメージしていたサウンドと近かったのですぐに連絡を取りました。Scottさんはアメリカで音楽活動をされているので、メールで音源をやりとりしながら制作しました。直接会うことができないので、本物の熱がこもった作品にできるのかという不安も最初はありました。でも実際はメールで細かく音のイメージを伝えたり、何度もやりとりを繰り返したりと丁寧に制作していけたので、最終的にはお互いのカラーが活きている力強い作品にできたと思います。
※2 シカゴ出身のポップパンクバンドのベーシスト。日本語ブログもある。
―「君の味方」の中の「強くて優しい世界」とは?
汚いことを汚い、おかしいことをおかしい、悪いことを悪いとはっきり言える世界だと思います。逆に、それを言えないこと、言えない環境を作ってしまっていることが弱さだと思います。
―「大人」とは?大人と子供の違いとは?
社会の一員としての責任感と、最低限の礼儀正しさを身につけた人が大人だと私は考えています。でも今の世の中では殆どの人が大人になりきれていないと思います。
―遼花さんの目指す大人とは?
自分は大人だという自覚をもって、次の世代に接することのできる人になりたいです。今私がもっている、腐った、汚い「大人」のイメージそのままの人には絶対になりたくないです。まだ19歳なので、自分は子供だと思っているのですが、あと半年ほどで20歳になるのでそれまでに考えるべきこと、やるべきことはいっぱいです。
―20歳を大人と子供の境にする理由とは?法的に決まっているだけでは?
20歳になったからといってすべての人が一人前の大人になれるわけではありません。でも、法的に成人になるということは、社会の中で自分が一人の大人とみなされるということです。その時私自身がどれほど、成人として恥じることなく行動できるかが課題だと思っているからです。
素の自分を忘れないように
仕事がわりと早い時間に入っている日は学校に行けない日もあります。でも勉強も仕事もどちらも好きなので辛いとは思いません。特に私が学んでいる政治学では、人間関係に応用できるような論理も身に付けられるので学んでいて楽しいです。
―学生の「遼花」と歌手の「遼花」はどう違うんですか?
基本的に同じですが、スタジオに入ったりマイクやカメラの前に立った時は、自然とスイッチが入って集中します。
―周りの学生と自分で違うなと思うところはどこですか?
私はこの年齢でプロとして、仕事として音楽をやっているので、無邪気さがないというか、スレたところがあるんじゃないかと思います。趣味を趣味として心から楽しんでやっている周りの学生を見ると、自分と違うなとは思います。
―遼花さんの趣味は?
趣味は映画を観ることです。最近観たのはシャーリーズ・セロン主演の『モンスター』です。連続殺人犯の人生が、犯罪者としてではなく私たちと同じような一人の人間として描かれていたところが衝撃的でした。
―仕事として音楽をやる上で、満足いかないこともありますか?
あります。バンドではなくソロのアーティストなので、サウンドやデザインなど、自分のやりたいことを具体的にイメージするのが必要だと思っています。
―これだけは譲れないものはありますか?
素の自分をいつも大切にしています。普段の自分の心の動きや、日常の中で感じ取ったことに正直でいたいです。
正直に誠実に付き合える友人たちは宝
―好きなミュージシャンは?ギタリストではSIAM SHADE(※3)のDAITAさんが大好きで、理由はギターが鳴っているのではなく、ギターで歌っているように聴こえるからです。歌詞も声も入っていないインストゥルメンタルの曲でも、DAITAさんがプレイすると、ギターの雄弁さやギターならではのスケールを感じることができます。
※3 SIAM SHADE:邦楽バンド、2002年に解散。アニメ「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」のエンディングテーマの『1/3の純情な感情』を知っている人も多い。
―洋楽はどういうのを聴きますか?
最近はポストロックが好きです。Efとかmumとか。
―ではBlindsideとかオススメですよ。
―好きなもの・大切なものは?
友達です。本当に大好きです。大学に入ってからできた友達もそうだし、内部進学者なので高校からの友達も大事です。中学くらいまで友達がほとんどいない子だったし、今も大人の事情が多い業界で仕事をしているので、正直に誠実に付き合える友人たちは宝です。
一問一答:遼花の豆知識
―自分を3ワードで表すとしたら?気分屋・わがまま・情熱的
0か100です。
―進級できそう?
できそうです。
―第二外国語は?
フランス語です。全くしゃべれません。
―恋はしている?
してません。
―恋の予定は?
ピンときたらいつでも。
自分らしく生きるために日々戦っていく
―これからの方向性は?私にはまだ経験も知識も技術もないけれど、だからこそリアルに伝えられるメッセージを伝えていこうと思います。そして、ライブでみんなと生の音楽を共有したいです。そうやって成長しながら、自分らしいサウンド、世界観をさらに追求していきたいです。
―どういうことを歌いたいですか?訴えていきたいですか?
自分らしく生きるために日々戦っていくってことです。私自身が経験した葛藤や悩みを歌うことで、同じような状況にいる人を少しでもナビゲートできたらいいなと思います。聴く人が何を感じるかは自由だけれど、痛みや悲しみや怒りといったマイナスの感情でも人と共有させてくれるところが音楽の素晴らしいところなので、そのきっかけを作っていきたいです。
―歌手一本で行くことは考えていますか?
今のところ全く考えていません。常にいろんなことに挑戦したいです。そのために私には大学があり、今の仕事があると思っています。今は両方とも大切なので、学業か仕事のどちらかに絞るつもりはありません。
―最後に一言お願いします。
居場所がないと感じている人も、将来やりたいことがわからない人もいると思いますが、誰にでも輝ける場所があると思うので、一緒に探していきましょう!
■Official Website http://haruka-official.com/index.html
■遼花のブログ(コメントはこちらへ) http://www.blog-stardust.jp/haruka/