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塾生インタビュー #33
■慶應義塾大学体育会端艇部
 副将:川浦慎平さん(商4)
慶應義塾大学体育会端艇部 副将 川浦慎平さん

春のうららの隅田川で行われる慶早(早慶)レガッタで活躍している端艇部をご存知だろうか?「レガッタ」・「端艇部」という言葉を聞いたことのある人は多いであろうが、はたしてそれが何を意味しているのかを知らない人も多いであろう。簡潔に言うと、端艇部とはボート部のことである。主な種目としては、ボートの華といわれる8人乗りのエイトや4人乗りのフォアなどがある。このように、ボートは団体競技であり、強いチームワークが必要とされる。そのため、端艇部では年間300日の合宿所生活を通して強靭なチームワークを培っている。今回は、端艇部副将であり、日本代表でもある川浦慎平さん(商4)に、端艇部合宿所で「チームワークの秘訣」や「文武両道の精神」について伺った。

■慶應義塾體育會端艇部
http://homepage3.nifty.com/keiorowing/
■早慶レガッタ
http://www.the-regatta.com/
■【レガッタ】100周年早慶レガッタ対校エイト、慶應が快勝! - 慶應ジャーナルニュース
http://www.keio-n.com/index.php?ID=101



■慶早レガッタも知りませんでした

―川浦さんは、なぜボートを始められたのですか?
 僕は高校からボートをやっていました。高校でボートを始めようと思ったきっかけは、新しいスポーツをやりたかったことですね。バレーボールや剣道などもやっておりましたが、球技はちょっとダメでした。僕の高校は、名古屋市内で唯一ボート部がある高校でして、「ボートは競技人口が少なく、インターハイにも出やすい」ということを勧誘のとき先輩に言われて入ってしまいましたね。

川浦慎平さん

▲場所は埼玉県戸田市の漕艇場(ボートコース)。
戸田競艇場ともつながっている。

―では、なぜ大学でも続けようと思われたのですか?
 大学でもボートを続けようと思った理由は、高校時代の不満足な結果からでした。また、当時のコーチであった現トヨタの渡部さん(OB、ヨーロッパでも活躍)に勧められたことも続けるきっかけになりましたね。それで、受験の結果を見て、結局慶應に進むことに決めました。でも実は、慶應に進むことを決めるまでは、端艇部や慶早(早慶)レガッタの存在は全く知りませんでした。


■地道な練習が勝利へとつながる魅力

―次に、ボートの魅力について伺いたいと思います。川浦さんのボートに対する魅力とは何ですか?
 練習しただけ強くなれることです。ボートは単純な動きの繰り返しなので、しっかりと集中し、周りのクルーに気を配る事が結果につながります。他のスポーツのように、弱者が強者を倒したりするなど、劇的な逆転劇が見られることはあまりないですね。強いものが強くと、実力差がはっきりとでますね。ゲーム性はあまりないのですが、地道な練習が勝利へとつながるので、やりがいがあります。それがボートの魅力ですね。

川浦慎平さん

▲艇庫(ていこ)。慶応義塾高校の船も
あわせて数十隻収められている。

―ゲーム性が少ないとはいえ、白熱することはあるのではないですか?
 実力が拮抗しているときは非常に見応えがあると思います。特にゴール前の競り合いなどがそうですね。しかし、そこで熱くなってはいけないんです。体育会に熱いイメージを持っておられる方も多くいらっしゃると思いますが、端艇部の場合、冷静さも重要です。冷静になって、自分たちのペース・スピードを保ち続けなければ、勝利へとつながりません。要は、「熱さ」・「冷静さ」の両方を兼ね備えていなければダメですね。

―練習はどのように行っておられるのですか?
 平日は午前に2時間半、午後に1時間練習を行っています。授業のない日は、午前に2時間半、午後に3時間くらいです。まず陸上でアップをして、ボートを漕ぎはじめます。1日に15〜18kmくらい漕ぎますね。

―練習を見ていたとき、すごくスピードが出ていましたが、時速何キロくらい出ますか?
 8人乗りでだいたい時速20キロくらいですね。マラソン選手と同じくらいです。

川浦慎平さん

▲オールも三色旗柄。ちなみに日本代表の
オールには日の丸が描かれている。

―ボートの魅力は、地道な練習が勝利につながることだとおっしゃいましたが、つらくてやめようと思ったことなどもあったのではないでしょうか?
 壁を感じて、練習をやめようかなと思うときもあります。しかし、それを乗り越えていくことが勝利へと繋がっていきます。基本的には、停滞していても練習を続けるのが一番ですが、停滞しないように日ごろから周りに声をかけています。明るくコミュニケーションをとって過ごすだけでもずいぶん違いますね。

―それは、やっぱり強いチームワークを培うためですか?
 そうですね。ボートはチームワークがとても大切ですから。周りとコミュニケーションをとることで、気持ちを切り替えられますしね。

■水の上で感じる8人の一体感

川浦慎平さん

▲今年(2005年)早慶レガッタ・優勝時の記念撮影

―端艇部は体育会の中でもトップクラスのチームワークを持っておられると思いますが、チームワークに関してどのように考えていらっしゃいますか?
 チームワークに関してですが、「一艇ありて一人なし」という言葉があります。これは、スター選手が一人乗っていても息が合っていないとスピードがでないという意味です。このようにチームワークを必要とされるのが、この競技の特性ですね。

―どのようにして強靭なチームワークを培っておられますか?
 年間300日に至る合宿所生活を通じてチームワークを培っています。そして、僕自身、最上級生なので、普段の生活でも人(後輩)に声をかけたりして、コミュニケーションをとっています。それもチームワークを作るうえでは欠かせないことです。慶應の端艇部は、クルーの一体感、統一性を大事にする傾向があります。例えば、挨拶だけはしっかりとすることになっていますが、その他は気さくに話をしたりします。そのフランクさが競技にも通じていると思います。上下関係というよりも、むしろ統一性を大事にする伝統があります。

川浦慎平さん

▲右はエイト(8人乗り艇)の舵を取るコックス・西山さん

―チームワークがすばらしいと感じる時は、どんな時ですか?
 水の上で8人の一体感がでると本当に気持ちいいですよ。船がグーンと進んでいく感覚があります。1人でやるより2人・4人・8人の方がスピードも断然出ますしね。それが、ボートの魅力ですかね。


■文武両道の精神を貫く

川浦慎平さん

▲ゼミ中の風景

―川浦さんは、忙しいにもかかわらず、ゼミにもほとんど出席し、課題もしっかりこなしていらっしゃるとのことですが、何かコツなどがありますか。僕なんかはとってもじゃないですけど、無理ですね…
 一つは、細切れの時間をうまく使うことですかね。朝、授業前に練習しますが、けっこう疲れるんです。なので、休み時間にしっかりと休んだりしていますね。あとは、電車の中で、本を読んだり、課題をしたりしています。練習は2人で出来るものもあるので、一つの練習にこだわらず、柔軟性を大切にしています。競技は4人や8人乗りのものがメインであっても、練習は2人とか少人数で出来るものも多いんですよ。だから練習メニューも各々個人の予定や授業とかに合わせて柔軟に組めるんです。これだと練習内容も偏らないですし、そういう点でも比較的両立がしやすいスポーツなんじゃないですかね。もう一つは、しっかりと気晴らしをすることです。これの気晴らしがポイントですね。

―どのように気晴らしをしていらっしゃるのですか?
 僕の場合はレコードが好きなので、休日には渋谷のレコード屋に出掛けたりしますね。また、本が好きなので、本もよく読みます。あと、みんなでご飯を食べることも気晴らしになりますね。他には、合コンにいったりする部員もいるみたいですよ。女性には好感触とか?

川浦慎平さん

―女性には好感触ですかー(笑)。では、部員のみなさんも文武両道の精神を貫いておられるってことですね?
 部員はみんな部活と学問の両立ができていますね。やっぱり部活だけだと偏ってしまいますので、バランスが大切です。さっき言った細切れの時間を利用して、司法試験の勉強をしている部員もいます。また過去には、公認会計士の資格を取った人もいますね。あと、通学時間が非常にかかるSFC生もいます。

―いろいろな部員がいらっしゃるんですね。でも、やはりすべて完璧ってなかなか難しいのではないでしょうか?
 はい。やっぱり電車で寝過ごすことや、中には、通学の途中で引き返してくる部員もいますね(笑)。

■日の丸を背負うということ

―最後に日本代表のことについて伺いたいと思います。オールに日の丸が描かれていたことが非常に印象的でした。日の丸を背負っておられることに関してどのようにお考えでしょうか?
 日本代表である限り、恥ずかしいことはできないなと思っています。僕は、日本代表の中でも若い方なので、ある程度「若さ」や「勢い」を出していけたらと思います。

川浦慎平さん

―日本代表になってよかったと思うことはありますか?
 トップクラスの人の話を聞いたり、練習を見たりすることで、改めてボートの奥の深さを知ることができます。また、一流の選手やライバルがいるってことは、すごく刺激を受けますね。

―いつから日本代表を意識するようになられたのですか?
 高2のときに、長良川で世界のレースがあるってことを知ったときですね。家の近くで開催されていたので、出られたらいいなと思っていました。でも、大学に入って無理かなと感じていましたが、大学4年で夢がかないました。

―夢がかなうってすばらしいことですね。では、次の夢って何かありますか?
 それは、30歳になってもボートを続けていることですかね。ボートは力だけでなく、船の上でのテクニックも重要なので、30代でも続けられます。先ほども言いましたが、ボートって一生続けても、奥が深いスポーツだと思いますね。

―ぜひ次の夢もかなえてくださいね。応援しています! 座右の銘があれば、最後に教えてください。
 それは、小泉信三先生(慶應義塾大学元塾長)の「練習は不可能を可能にする」ですね。

―今日は、本当にどうもありがとうございました。




取材   直江利樹
柄澤直己



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