『三田マスコミ塾』の名をご存知だろうか。
過去十年間数多くのマスコミ内定者を社会に送り出してきた、塾内のマスコミ勉強会だ。慶応義塾の卒業生であり、毎日新聞社の記者でもあった磯貝喜兵衛先生は、10年間三田マスコミ塾を主宰し続けてきた。
*プロフィール*
三田マスコミ塾 代表 磯貝喜兵衛(元毎日映画社代表取締役社長、元毎日新聞社編集局次長、慶應義塾大学新聞研究所OB)
三田マスコミ塾に関する問合せ先:isogai4131@nifty.com
三田マスコミ塾とは、その名のとおりマスコミを学ぶ塾のことだ。
旧新聞研究所(現メディアコミュニケーション研究所)の塾生を中心に、新聞・放送・出版・広告などのマスメディアへの就職をめざす学生たちを対象にした少数精鋭の講座として10年前に発足した。著名マスコミ人による講話や、作文・小論文の添削指導、時事問題・一般常識・面接・エントリーシートの実習など、就職対策の指導が行われる。
三田マスコミ塾を主宰し、当塾で講師を務める磯貝喜兵衛先生は、1954年に慶應義塾大学文学部を卒業され、毎日新聞でジャーナリストとして活躍された塾員である。元毎日映画社代表取締役社長、元毎日新聞社編集局次長である磯貝先生の人徳で、著名なマスコミ人が当講座にはゲストとして招かれる。三田マスコミ塾受講者の学生の就職先としては、難関と言われるマスコミ各社を始め、人気企業がズラリと並ぶ。最難関のマスコミへの挑戦は、一般企業への幅広い就職にも役立っているという。
時は今から約50年前、慶應義塾大学文学部二年生だった磯貝先生は、現メディアコミュニケーション研究所である新聞研究所に入所。当時の言論界のまさに中心であった新聞に興味を持ち、世の中をリードする仕事として新聞記者の道を志していた。
彼が学生時代に夢中になったのは、学生新聞の制作、映画鑑賞、読書だという。小説・雑誌などジャンルを問わず読みふけり、映画のワンシーンのまだ見ぬ外国に胸躍らせた。未知の世界を知りたい―――ジャーナリストとしての磯貝先生の根本は、常に彼を突き動かした好奇心にあったのかもしれない。
「マスコミで働く面白さは、常に新しいことを体験できるということ。未知の物事や人の活動、興味のある事象とじかに接しながら、それを読者、視聴者に代わって追及し、伝える職業だと思います。」
―自身が記者として活躍してきた上に、数々のマスコミに塾生たちを送り出してきた磯貝先生から見て、ジャーナリストに必要な資質とは、何だと考えられますか?
「よく言われることですが、世の中の森羅万象について、好奇心を持つことです。何かに向かって、積極的で意欲に燃えていること。”明るさ”もたいせつです。」
かつての自身の就職活動の際には、新聞社の入社試験を想定した作文を仲間同士で出題したり、批評し合ったりした。
同じ仕事を目指す仲間が連帯して切磋琢磨しあう場所をつくる――
三田マスコミ塾設立の目的のひとつは、そこにあった。
毎日新聞引退後に出席した新聞研究所の後輩との交流会で、後輩からマスコミ塾の設立を提案されたのがきっかけだったという。
「塾やってくださいよ!」
三田マスコミ塾は、そんな縁から始まって、今年で10年目になる。まさかこんなに長く続けることになるとは、というのが今の磯貝先生の心境だという。
講義時間は約3時間。平常は毎回一時間かけて作文や小論文試験を行い、一時間かけて講評や重要ニュースのコメントを行う。
作文・小論文の課題はマスコミ各社で出題される傾向のあるものを、本番どおりの時間で取り組む。
学生の作文には磯貝先生自身が目を通し、ひとつひとつ丁寧に講評と添削をする。
マスコミへの就職を共に目指す仲間が、どんな目線でものを見て、どんな文章で表現しているのか―――作文の練習のみならず、ものを見、読む視点を学ぶ。
切磋琢磨の現場がそこにはある。
毎日新聞の記者になった磯貝先生は、入社一年目に担当した事件の悲惨な現場に衝撃を受けたという。修学旅行の中学生を乗せた客船が沈没―――死んだ子供のたくさんの死体・・・・
なぜこんな悲惨な事故が起きたのか。磯貝先生が感じたのは、怒りよりも強い「なぜ」という思いだった。
「“なぜ”の部分が一番大切ですね。起きたことを受け止め、考え、追求し、社会に公にするのが記者の仕事です。」
マスコミ塾で塾生に考えてほしいことは、就職活動のノウハウよりもむしろマスコミとは何かということや、何を目指すかといった気構えなどだという。
「マスコミで働く人には、政治や社会を良くするために自分がジャーナリストとして、何ができるかを問いかける人であってほしい。マスコミはあらゆる権力をチェックする機関ですから。」
三田マスコミ塾では、マスコミ内定のOB・OGをゲストに招いた講義や、著名なジャーナリスト等を招いた講話を定期的に行う。2004年5月に行った講義では、毎日新聞編集局長(当時)の朝比奈豊氏が招かれ、マスコミとしてのものの見方、ジャーナリストのあり方を塾生に語った。
三田マスコミ塾の講義は、仲間作りとジャーナリズムの勉強の二本立て。そのどちらも、人とのふれあいの中で実践的に行われる。
マスコミに限らず、学生が自分の仕事を選ぶ際に何を重視すべきだと考えますか?との問いに
「自分のめざす“夢”が将来実現できそうな職業であるかどうか、が決め手でしょう。興味のある分野に直結していればさらに良し。“好きこそモノの上手なれ”ですから。」
と語ってくれた。
―塾生に向けて、一言メッセージをおねがいします。
「Boys be ambitious !」
ジャーナリスト時代の裏話を交え、終始おだやかに語ってくれた磯貝先生。
三田マスコミ塾では、毎年大学2年生以上・25人の定員を対象に講義を行っている。前期6月〜10月、後期11月〜3月の2期制であり、受講料は半期3万円。必要経費のみの格安価格で、上質な講義を提供し続けている。
マスコミ塾は、学生の夢を応援する彼の、一種のボランティアのようなものだろう。
彼の援護射撃は、塾生にとってとても力強いものであるにちがいない。
あなたの好きなものはなんですか?あなた自身の学生時代、何に夢中になっていますか?
自分の好きなものを大切に、世界を見つめ続けてきた人の余裕が、わたしたちにこう問いかけている。
大志と夢を抱け。
慶応義塾の大先輩からの、貴重なメッセージだ。
※三田マスコミ塾に関しての問い合わせは isogai4131@nifty.com まで。