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塾生インタビュー #19
■『色即是空』 総合プロデューサー
 内田伸哉さん

まず人を楽しませること。そんな思いから生まれたのが昨年、来往舎で開催された『色即是空』というエンターテイメントショー。その総合プロデュースを行った内田伸哉さん(理工4年)にお話を伺った。

『色即是空』というテーマについて
「今回集めた団体は日々いろなパフォーマンスを考えている。その日々刻々と変わっていって新しいものに挑戦して、変化をし続けているパフォーマンスを見てもらうというのが一つ。もう一つは単純に色をテーマにした舞台だということ。(インタビューより)」



■人を楽しませるということ



内田さんがマジックと出会ったのは高校1年のとき。「あまり人が目につけてないけどおもしろいこと、そして人を楽しませることができるもの」という基準で奇術部に入った。大学生になってからもその活動は続き、現在様々なイベントで活躍するプロのマジシャンである。マジシャンに必要な能力について聞くと、手先の器用さなどではなく、口の器用さと人を楽しませるというエンターテイメントの根本を考えているかどうかだという。少し意外そうな顔をすると「すごい上手い手品をネクラな人がやっても面白くないでしょ」と笑って説明してくれた。
 
 手品とは「その手品を使って1つのストーリーを作ること。見てて楽しくさせるのであって、タネを疑わせる側もいけないし、疑う側もいけない。」という。

■演者、観客、舞台

 何回も仕事として手品を披露をしている内田さんだが、実際にその場で盛り上がるかどうかは半々くらいだとか。「パフォーマンスというのは、パフォーマンスをやる人と、それを見る観客と、舞台環境、この3点が必要」なのだそうだが、普通このうちの2つ、つまり舞台と観客はクライント任せになってしまう。「今まで一番うけなかったのは、おばちゃんたちの蟹食い放題パーティ。もう蟹しかみえてない(笑)。鳩がでても蟹食べてるし、ジャグリングしても蟹食べてるし(笑)」。逆に舞台がなくても、司会者がきちんと紹介してくれて1つのイベントとして成り立っていると時はうけるという。
 仕事は仕事として割り切る部分もあるが、手品が上達してくると段々と欲求不満になってくる。舞台環境を自分たちでしっかり整えたショーをしてみたい、そう思っていた時に出会ったのがHAPP(慶應義塾大学教養研究センター日吉行事企画委員会)の学生企画応募だった。
 
※HAPPの学生企画公募(http://www.hc.keio.ac.jp/happ/
来往舎のスペースを使い、キャンパス内外の人々とふれあうことにより実践的に社会を学ぶを事が目的し行われている。企画案が通ると25万円まで補助金が支給される。今年度の応募の締切は5月23日。

■動きだしたプロジェクト

 そして2日間で1000人近い観客を集めた『色即是空』プロジェクトは動き出した。ショーの中身は手品にこだわらず、純粋なエンターテイメントを追求。「さっき僕が手品を始めた理由が人を楽しませることだって言ったと思うけど、それだけが条件」というように、JADEのダンスに始まり、ジャグリングやパントマイム、一輪車など様々なジャンルの一流の人たちが集まった。知り合いの人たちもいるが、いきなり電話をかけて頼んだりもしたという。「とりあえず電話してみればどうにかなるもんだと…(笑)」。
 
 ただそれだけ様々な団体を統率するのは「すごい大変でした」という。直前に1つの団体が出れなくなりそうになったこともあった。それゆえ、内田さん自身が今回舞台に立つことはなかった。「めちゃくちゃ(手品を)したかったですね。でも自分がここが悪いから直せっていうのが舞台にでちゃうといえないので。一つの一貫した舞台にするなら自分はでちゃいけないと思った。」ただ、その演出の面白さは想像以上だったという。
 様々な演者がトップレベルの演技をする中に、内田さんは今回の『色即是空』のテーマである“色”を加えていった。演者の演技を壊すことなく、ショーの繋ぎ目に多彩な映像を使い、1つの『色即是空』というショーとして完成させた。



■もう1つの目的

手品というのはご存知の通り個人技がほとんどだ。そのため連帯感のようなものが中々生まれにくいのだという。今回のプロジェクトでは、そこをなんとかしようと内田さんは動いた。全体の演者が決まった時に全員で飲み会をしたり、リハーサルの時も他団体の人たちと話して、少しでも全体の距離を縮めるようにスタッフ全体で努めていった。「(色即是空が)終わった後もパントマイムのところに遊びにいったりする人もいたの。ダブルダッチを毎月1回くらい渋谷の代々木公園でやっているらしく、その縄日にうちのサークルの何人かが遊ぶにいったりだとか。そういう自分の知らないところで、新たな交流が生まれたのがよかった。」
 今回、別ジャンルの演者たちのコラボレーションをしたらという案もあったが、時間がなく実現されることはなかった。しかし、このような事が少しづつ続いていけば、近いうちにコラボレーションが実現する日がくるかもしれない。

■まずは失敗すること

 マジシャンから新たにまた演出という道を開いていった内田さんは「とりあえず失敗しろ」という。実際内田さんのマジシャンとしての歴史も失敗から始まる。初めは半分ボランティアくらいの感じで、マジックを披露する場所を自分で見つけてきてやっていた。「そこでめちゃめちゃ失敗したの。すっごいうけない手品とかいろいろやって」。でもそれによって、うけないということがどういうことなのか判るようになったという。「あと、失敗してもそこで失敗したのはかなりの失敗だったから、それ以上はいかないじゃん。だからそこで度胸がついたね。」だから失敗することが大事だという。「そのままつきすすんじゃ駄目なんだけど、それを考察して直した人が一番上手くなっていくと思う。だからちょっとずうずうしさが必要だと思う。下手でもどんどん、やっていける。でもあんまりずうずうしすぎるとただの迷惑な人になるから、相手がそれをどう思っているからって考えないと、そういう面からも考察しないと、駄目ですね。自己満足だったら片方だけでもいいんだけど。」

 今後はマジシャンを副業としながら理工学部の電子工学科で画像工学を勉強していくそうだ。「時間が上手くできたらやってみたい」と、次の企画にも意欲をみせる。さらに進化したエンターテイメントショーが見れる日が来ることを期待したい。




□現在企画中の色即是空2ホームページ 
 http://www3.to/ssz2

□手品の依頼は以下のホームページもしくはメールにて
 奇術愛好会営業チーム「マジックミラー」
 http://www3.to/magicm
 magicmirror@anet.ne.jp


取材   南郷史朗



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