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塾員インタビュー #4
■トレンダーズ株式会社代表取締役
 経沢香保子さん

在学中は経済学部飯野ゼミに所属。97年に卒業後リクルートに入社するが、誘いを受け1年半で転職。その後再度転職し、楽天で新規事業の「楽天大学」の立ち上げにかかわるなどを経たのち現在の会社、トレンダーズ株式会社を2000年に立ち上げる。トレンダーズでは女性起業塾をはじめ、マーケティング,PR,出張ネイルサービスなどの事業を手がける。




「うちは今営業みたいなことは一切してないです。」インタビューはこんな意外な言葉から始まった。新たに顧客を獲得するために単純に思いつくこととは、営業をするということである。経沢さん自身、リクルート時代はいわゆる飛込みを始め数々の営業を経験してきた。しかし、現在の会社ではそのようなやり方をとっていないという。 「有名な経営者の言葉で、一人の人間の周りには250人の潜在顧客がいるっていう言葉があって、つまり誰にでもそれだけたくさんの潜在顧客がいるのだから、その人のために最善を尽くすと250人までは紹介してもらえるっていうそういう理論があります。 だから私が経営のときに心がけているのも結局そういうことで、その一人一人のお客さんとか満足度を最大限に高めれば、営業をする必要がないと思っています。うちは新規のお客様はいらっしゃいますが、ほとんど新規開拓はやらないやり方を通しています。もちろん最初はお客様がいないと駄目なのでがりがり営業しましたが、今の営業方法は違う方法です。」

またそれは社員のモチベーションの問題も解決しているという。「頭下げて営業していると自分の人間としてのレベルが低くなったように感じてしまう人が多くて・・・。もちろん、本当は違いますが(笑)。お客様もお願いだからやってくださいといわれると、仕方がないからやってあげるよという感じで、こっちはお願い営業だからその後の取引も、『じゃ値引きしてくれるのでしょ?』みたいな感じで対等なパートナーとしての仕事はできない。そこにエネルギーを注ぐと仕事はつまらなくなるし、私たちのもっている、いいサービスを必要としている人に使って頂いてお互いをハッピーにしていくほうが仕事として正しい、と私は思っています。」

スカッシュをやりながら過ごした学生時代

そんな経沢さんの学生時代はスカッシュを抜きには語れない。中高と受験校にいたため、あまり運動に真剣に取り組む機会がなかった。大学では何かスポーツをと考えていたときに出会ったのがスカッシュだった。「一番になれそうだから」というのが選んだ理由。「みんなテニスとか始めるじゃないですか。でもテニスって高校のときからやっている人がいるから、今からやっても勝てないなと思って。スカッシュは誰もみんなやったことないからやればやるほど上手になるから、はまっていました。」事実全国大会のランキングにも入っているというのだからすごい。「ほとんど毎日、朝練をやっていました。その頃自由が丘にスポーツクラブがあって、そこでみんなやるんですけど、私は松戸に住んでいて、松戸から自由が丘に早朝の始発電車でいって、スカッシュやって2限から授業に出ていました。で、夕方はアルバイトというすごい激しい学生生活だったと思いますよ。一日をフル活用していましたね。」

 そんな忙しい学生生活の中、授業で一番印象に残っているのは金融資産市場論だとか。「その時はあまりビジネスとかわからず、彼らが使っている単語も理解できませんでした。でも今は一番聞きたい授業ですね。吉野先生があのように外部のビジネスマンを塾生に触れさせようとする姿勢が、今考えるとすばらしいです。」
最後に,大学時代を過すうえで重要なことはありますか?
「まず、動く!」ことだと思います。すべて自分なりに行動してから考える。考えてから行動するのでは遅いと思っています。
また、月並みですが「多くの人に出会い,人を知ること」も重要だと思います。その結果、
脳を活性化する。いろんな本や人に触れることで,多様な価値観に触れ,「自分という存在」を確立する貴重な時間だと思っています。

経営者の目から見る優秀な人材

―経沢さんが考える優秀な人材とはどのような人なのでしょうか?たとえば、採用活動において人を見るときのポイントだとか?
「経営者として優秀と、会社員として優秀とでは違うと思いますが,根本して共通して優秀だなっと思う人は、素直で学習能力が高い。素直っていうのは絶対大事で、聞く耳がちゃんとある人。どんなにアドバイスをしても、聞く耳を持たない人は駄目ですよね。でもちゃんと聞く耳を持てる人は何を見ても勉強できる、自動学習できるのよ。だから素直で学習能力が高い人は、もう無敵だと思う。周りの人がどんどん教えてくれるし。本当に成長しつづけて成功すると思う。 あともし具体的にもう少しいうとしたら、ビジネスだができる人に共通していることは、実行力があって読書家だっていうことかな。」

―読書家というのはなぜでしょうか?
「みんな課題ってありますよね、生きていくうえで。それって自分で解決していかなければいけない。それぞれの悩みって違うし、今恋愛のことで悩んでいてすごくへこんでいるかもしれないし、いろいろあると思うんだけど、たぶんその悩みを解決した人が本を書いていると思うのね。解決したって言うか、経験やいろんな苦悩とかが文章に表れていてそれを世の中に広めたいとおもっているわけと私は感じます。だから今自分が考えていることの解決策っていうのは必ず本屋にあるのでは。自分でそのタイミングでその必要な本を体に栄養を取り入れるみたいにちゃんとみつけて読める人はすごくいいとおもう。そういう習慣がある人は。結局成長し続けることと私は思います。」

女性が企業を選ぶ上で大事にすべき視点

―現在就職活動中の女性が企業を選ぶとき、どのような目で企業をみたらいいのでしょうか?
「キャリアアップの最終目的をどこにおいているかにもよると思いますが,男の人は大抵は60歳まで仕事中心と考えられますが、女の人は結婚や出産などのタイミングによって、やめるという選択肢もありますよね。だからそう考えると短い間でも早く成長できる職場を選んだほうが人生のペースを掴みやすいと思う。もしくは、一生絶対ここで働くから、育児休業もちゃんととれていうのもひとつかもしれないけど、その会社に一生いるなんて決める人生はあんまりおもしろくないと思ってしまったり。もし、自分の力で何かやろうと思うなら、いかに一秒一秒の密度が濃いか、すぐいろんな仕事をまかせてもらえるとか、まかせてくれなくてもとにかくやらされるうちに力がつくとか、そういう所にいったほうが一年後の自分は、一年前の自分よりも普通のペースで働いている人よりも3倍だったら3年分、2年得したことになりますよね。だからなるべく密度の濃いところに入ったほうが、私はそれがよかったと思う。私はリクルートに1年ちょっとしかいませんでしたが、5年先の先輩に負けない自身もあったし、5倍速に進みたいといつも思っていました。」

―時間が短いことを意識して、時間を有効活用できる会社を探すという・・・
「そうですね。能力が速く速く発揮できる。例えば普通の会社に入社していたら起業しなかったと思います。なんかね、毎月20万くらいのお給料を安定的に貰うために,嫌な事を我慢するのであれば,多少リスクがあっても,自分が満足のいく人生を送りたかったら、どこでも戦える能力を高めるのが一番だと思います。」

起業という選択肢について考える

―女性起業塾をなさっていますが、起業ということについてどのように考えていらっしゃいますか?
「私が思っているのは、慶應を出ている人達はみんな優秀なのだけど、そういう人達で起業している人は少ない、起業より大企業に行く人が圧倒的に多い。私もそうだったから。慶應を卒業したら、普通にいい会社に就職して、その中でそれなりにあがっていく人生がある程度幸せで、そういう状況が普通で、その中でいきていくから、なんかそこから外れて自分から何かやるという選択肢があんまり思いつかないのが普通の慶應生の姿だと思う。でも、せっかくの優秀な素質をいかして世の中に新しいチャレンジをして欲しいとは私は常日頃思っていて、だから女性起業塾という形で起業を応援しています。大企業に就職する力と,起業する力は違うけど,もっと優秀な人たちに起業を身近に感じて、世の中にチャレンジして行って欲しいと考えています。」
―起業するということと大企業の中にいるということの違いは?
「私は3社を経験しているのですが,会社員時代は、例えば,社会の基本とか、まわりとのチームワークとか,基本的な事を学べるいい機会でした。ただ,私は,会社員という与えられた人生よりも,自分の知力を最大限に活かして,周囲に影響力を生み出していく人生を目指して行きたいので、起業と言う選択肢を選びました。」

―起業したいと思う方が一番不安に思っていることっていうのはなんなのでしょうか?
「多くの人は,「人脈がない」「お金がない」「経験がない」と言うのだけど、経験なんてあるわけがない。人脈がないっていうけど、人脈はあるのね。今まで生きてきたら、さっきの250人論じゃないけど既に周囲にいるのだと思います。お金がないってのは当たり前で、お金を生み出すことが起業だと思います。使うことを最初に覚えてしまうからITバブルみたいな多額のお金を投資しても収益性が低いという現象が起きるのだと思う。だから私は絶対借り入れをしないで、自分のお金でやろうと思ったし。世の中にはお金なくてもできる仕事は考えればあると思います。」

―それを考え出すことが起業ということになると?
「そうですね。起業=クリエイティブな生き方と私は考えています。お金の稼ぎ方は二つで、時間を売るか能力を売るか。で、2つ目は頭からお金が生み出てくるってこと。前者は自分の体力とか時間を会社に売る事でお給料を貰う。後者は頭を使ってお金を生み出す。今の日本は不況だから新しい産業とかが興らないといけないと私は思う。で、経営者っていうのは雇用を生み出してサービスを生み出して、その1社の存在がひとつの経済循環になる。トレンダーズ株式会社も、10人くらいにスタッフにお金を払い、ネイリストの派遣業だったら200人くらいにお金を払っている。お給料を貰っている人達は,またそれらのお金で消費活動を行って・・・より大きな経済循環が発生すると私は思います。つまり,起業すると経済活動の中核になれる。」

―自分で自ら経済活動を起こすという?
「そうですね。その中心になってい社会の役に少しでも立ちたいです。」


―最後に塾生に対してメッセージがあれば。
「世界は広いと思います。今学生生活を楽しんでほしいという視点と、あともうひとつの自分というのを作ったらいいのではと思います。それはなんか、もうひとつすごくがんばれるもの。アルバイトでもいいし、飲食店でそのことについて詳しくしることでもいいし、趣味の世界でもいいと思います。学生時代って時間があるからもうひとつの自分みたいなものをつくっておいたらいいかなという気がします。いろんな事を経験して人生の幅を広げてください。」


経沢さんお勧めの本:『幸せ力をつけるお金持ち練習帳 沢木遥』
「女の子の幸せって今まで二つしかなくて、専業主婦か働く主婦。そうではない新しい第3の生き方として、自分の好きなことをして、社会とも家族とも対等でハッピーな人生は自分で小さくても、起業することだとこの本には書いています。私が世の中に伝えたいことを、女性起業塾の生徒が書いてくれたのだと思うくらい、生き方と真剣に考える女性にはとてもお勧めです。」


トレンダーズではインターンやアルバイトの募集もしています。


取材   吉川英徳
 南郷史朗



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