★特集 - 慶早戦の裏方たち '05
塾内最大のスポーツイベントである慶早戦では、数多くの団体が塾生の安全で楽しい試合観戦のために活動している。その中でも私たち塾生が一番近くで接している団体といえば、慶早戦支援委員会だ。彼らは硬式野球の東京6大学リーグ戦のトリを飾る慶早戦の支援活動を行う、塾内の福利厚生機関である。慶早戦が近づくと誰もが目にする光景、チケットを販売し、広報活動を行っている学ランの塾生たち―彼らが慶早戦支援委員会に所属している塾生である。もちろんチケット販売だけが支援委員会の仕事ではない。彼らが実際にどのようなかたちで支援活動を行っているのか取材を試みた。
―支援委員会はどういった経緯で設立されたのですか?
結論から言うと、誰にも正しい設立の経緯は伝わっていません。しかし私たちが認識していることとして、活動している上での意義から言うと、慶早戦を盛り上げるために出来た団体です。
慶早戦を開催する上では学生自治というのが必要です。慶早戦でヒートアップしている学生の中での混乱を避けて、誰もが楽しく盛り上がれるような慶早戦の雰囲気作りを支えていかなければいけないと思うのです。委員会の中ではこの「学生自治」という言葉を重みのある言葉として扱っていて、活動の前にこの言葉の意味をみんなで再確認しています。
慶早戦は、社会的な認知度も高い、慶応義塾大学にとっても重要なイベントの一つですので、塾生自らの手で盛り上げていきたいと思って活動しています。
―どのようなことをやっていたのですか?
当日までに行うこととしては、各キャンパスでのチケット販売と、その告知をすべく広報活動があります。ステッカーやポスターを貼ったり、中庭で販売告知をしたりして慶早戦関連の広報を全般的に行います。
そして試合前日には、慶早戦観戦のために徹夜で並ぶ人たちの警備をしています。並んでいる間にお酒を飲む人たちも少なくありません。もちろん純粋に並んでいる人もいますし、並ぶこと自体は構いません。しかし時として近隣に迷惑をかけてしまう場合もあります。
そのため、騒ぎすぎることなどがないように見回ったりするのです。泥酔者同士だと、何か問題が起こった場合もお互い放置した状態になり、倒れた人は倒れたままです。今年もそういった方々に注意を促した事はありました。このような警備活動は男子部員が中心となって行います。神宮球場から許可を得た上で泊まりこみをし、交代制で責任を持って学生の安全をサポートします。
―当日の活動としてはどのようなものがあるのでしょうか?
当日の主な活動は、警備や誘導、清掃があります。
学生券には整理番号がついていて、番号によって集合時間などが変わるので、整理番号に従って学生を誘導します。入場のための誘導ですね。同時に、列を回り、ゴミを随時回収して回っています。これは支援委員会独自で行っている活動でもあります。
―試合中は何をしているのですか?
試合が始まれば一般の塾生と同じく、試合を観て応援しています。ただ、一回から九回まで終始試合観戦を楽しむわけにはいきません。七回が終わったあたりから、試合終了に伴う観客の退場に備えて準備に入ります。
観戦に来た人たちの移動が始まると球場内がととても混雑するので、入り口付近での待ち合わせなどをしないように、スムーズに駅に帰ってもらえるよう誘導します。その他、試合が終わった後の活動としては、球場外の清掃があります。球場内は応援指導部が担当しているので、球場外を支援委員会がやっています。
―試合後と言えば日比谷公園へ行くのが塾生の恒例行事となってしまっているようですが…
そうですね。試合後に飲み会をして日比谷公園に行く。そして酔った勢いで公園の噴水に飛び込む塾生がサークル単位でたくさんいるようです。
―そういった塾生に対してはどのような対処をするのですか?
まず、私たち支援委員会は、塾生の保護が第一ですが、学生が学生を管理するのはおかしいという考えを持っているので、罰則のようなものはありません。私たちとしては、塾生の保護が第一です。しかし、お酒を飲んで噴水に飛び込むと、転倒したり怪我をしてしまう場合があります。さらに、日比谷公園は石畳だから、濡れると滑ってとても危険です。また、噴水の中のパイプが破損すると、大学側が賠償責任を負わせられる場合もあります。だからパイプは踏まないように人を立たせて(部員を配置して)、警備を徹底しています。
それに、日比谷公園って普段はとてもムーディな場所じゃないですか(笑)。カップルなども多いですし。そういう一般の方に迷惑がかからないようにするためにも、騒がしい状況はなるべく抑えたいですね。
―慶早戦がない期間はどのような活動をされているのですか?
名前が名前だけにこの事に関しては、よく質問されます(笑)。でも、基本的に慶早戦の期間のみ活動しています。終了後には、自分たちの間で活動を振り返ってミーティングを行いますが、秋までの間は各々の好きな時間を送っています。
野球以外の慶早戦に関しては個人的に観戦に行くくらいです。これまでに依頼を受けたケースがないのでサポートなどは特にしていませんね。
―今回の慶早戦は雨での順延などもありましたが、大変だった事は何がありますか?
夜間警備と同じくして、ローピングという作業をしています。皆さんが入場前に並ぶ神宮のアーケードにはロープが張ってあると思いますが、そのロープを私たちが毎晩張り替えています。試合後来場者が帰るときには邪魔にならないように取りはずして、夜にまた張って…。ロープを緩く張ってしまうと、並んでいる人が寄りかかったときに転倒する危険が伴いますから、ロープをしっかり引っ張って強度を増せるよう注意しています。結構力が要る仕事で、実は大変な仕事なんですよ。そのロープは晴れの場合と同じく雨で中止になった日にも、万一の決行に備えて用意するわけです。しかし、雨の場合は切ることになると…。
そして、雨で試合期間が長くなれば長くなるほど、委員は神宮球場に泊まることになります。神宮球場で暮らす日数が増えるのです。私たちは前日から警備のために泊まることになるので、今年は三泊しました。
試合前に関しては、大きなトラブルはありませんでした。むしろ今年は優勝がかかっていたので、チケットの売れ行きがすごかったです。これは逆にいいことです。購入者の一番多い日吉キャンパスでは、販売開始より前からすでに規定の枚数以上の人が並んでいたようです。
―体力的にも精神的にも負担が大きいのでは?
そうですね、上級生は30分しか寝てないなんてこともありますね。四年生は責任者ということで、一睡もできなくて、明け方に仮眠を取る程度しかできないときもあります。睡眠時間が短くてピリピリしてしまうのは事実ですが、そもそも私たちは慶早戦を盛り上げるために活動をしているのですから、いかに楽しく過ごすかが重要になってきます。
―チケット販売を行っているとき、授業はどうされているのですか?
販売はシフト制なので、授業に出られないことはありません。学業優先という前提を掲げた上で活動しています。
試合当日も1限に授業のある下級生は授業に出てから球場に来ます。上級生になると勝手がわかってくるので、履修の時点で考えて、1限は取らないようにする人が多いので、活動のために単位が危なくなることもないですね。
―活動をやって良かったことは何ですか?
ゴミを回収しているときなどは疲労感が出て、なぜ自分が他人のゴミを?と思うときもあるのですが、そんな時に「いつもご苦労様です」といってくれる塾生もたくさんいます。この一言で、慶早戦の支援の一角を担っていることに誇りを感じられます。ゴミ袋を団体の方に直接渡すこともあるのですが、中には気配りしてくれる人がいて協力してくれたりします。これぞまさに学生自治の意義ですね。
それから、いつもは早稲田より入場に並ぶ人が少なかったんですが、今回は慶応のほうが多かったです。内野が満員になることは今までなかったのですが、今回初めて満員になり、3試合目は平日にもかかわらずほぼ満席でした。塾生みんなが優勝を信じて応援に来てくれている姿を見て、やってよかったな、と思いました。
慶早戦がつつがなく終わったとき、盛り上がったとき、疲れは自分たちの努力の結晶になるんです。それは本当に心地よい疲れです。皆さんのおかげで成功させられたということで、喜びになる。
―支援委員会に入って特によかったと思うことはありますか?
一言でいうと、慶應義塾大学というものを、好きになるきっかけになりました。應援指導部とか、学事の方だとか、放送研究会の方であるとか、そういう人とのつながりを通じて、慶應に入ったということを強く実感しています。
若き血を歌うだけでも、支援委員会の一員として慶早戦をサポートしている分、思い入れが違うのではないかと思います。塾歌や若き血を覚えない塾生も多いと思いますが、せっかく入学したのだから、覚えずに卒業するのは寂しい。だからしっかり広報して、ひとりでも多くに球場に足を運んでほしいですね。
―慶早戦に応援に来る塾生に一言メッセージをお願いします。
怪我がなく、無事に「慶早戦が楽しかった」と、振り返ったときにそう思えるような慶早戦を過ごしてほしいですね。
ふらふらになって担がれている人なんかもいますが、お酒で覚えてないなんて困りますし(笑)せっかくサークルなどの仲間と来ているのだから、楽しく若き血を歌って帰ってほしいと思います。
支援委員会の皆さん、ご協力ありがとうございます、
そして悪天候の中での活動も含め、本当にお疲れ様でした!