> 慶應ジャーナル > 探偵!慶應スクープ > Case 2
Case 2
■モーニング娘。研究会ってなんだ?

モーニング娘。研究会というサークルがあるのを知っているだろうか? 今年度から発足した新期サークルである。サークル紹介の冊子を見た人は、おそらく気になって仕方なかったのではないだろうか? かくいう私もその一人だ。 ということで、潜入取材を試みた。




慶応ジャーナルの取材依頼に対して「顔出し、実名NG」という条件で幹部のA氏がインタビューに答えてくれた。

J・まずモー研。を作ったきっかけから教えてください。

A・そもそも某大手掲示板サイトにネタで「モーオタ(モーニング娘。オタク)サークルを作ろう」って書き込んだことがきっかけです。思った以上に反応が大きかったんで思い切って正式に設立希望を出したんです。そしたら通っちゃったんで(笑)


J・反応が大きかったとはどのくらいですか?

A・そうですね〜、説明会には80人くらい来たかな。問い合わせの電話も多い日は一日20件くらい。まあ、その大半がいたずらでしたけど。まあでも、オリエン期間中手ごたえは感じましたね。あちこちでヒソヒソと話題になってるのが耳に入ってきましたから。


・そこまで反応が大きくなった要因は?

A・まあやるんだったらちゃんとやろうと、一応作戦は立てたんですよね。オリ実に提出する説明会の希望は最終日にして、入学式から説明会までの間に名前が浸透する時間を稼いで。あと、どうせ細かい文字を書いても、あんなにポスターがある状況じゃ誰も見ないし埋もれちゃうので。説明会までに、とにかく「モーニング娘。研究会」という存在だけ認知させようと。

 その上で、その名前が引っかかった人は、家に帰ってパンフを見て説明会の時間を確認してくれれば良い。だから、顔写真を大きく使ったり、とにかく目と脳にインパクトを残すことを心掛けましたね。何も考えてないわけじゃないです。


J・確かにあのポスターはインパクトありましたもんね。



A・で、冷やかしでも良いからとにかく説明会に来てもらえばと。ホントにキモイって思ってる人は、冷やかしにさえ来ないですから。例えネタとしてでも冷やかしに来たってことは、やっぱり、大なり小なり脈があるってことです。あとはそれに如何に火をつけるかだけですからね。


J・説明会自体にも何か作戦があったんですか?


A・もちろんです。どうせ、オタクっぽいサークルを想像してるので、その期待を良い方向に裏切ってやろうと。ちょっと自分のPCでDJの真似事したんですよ。で、「何だ、普通の人がやってるんじゃん、想像と違った」と、そして、裏切ったところで、畳み掛けるようにその日のカラオケでこれでもかというくらいに盛り上げる。カラオケに連れて来るとこまで行けば、モーニング娘。なら、絶対に誰でも盛り上がることができると自信はあったので。そして、予定通り盛り上がったと、そんな感じですね。


J・一部ではネタサークルなんて言われてますが、その辺についてはどうでしょう?

A・いや、そのまんまです。とはいえ現在部員が他大生も含め40人以上になっています。もうネタというだけでは済まないんで。こうして取材も来ているわけですし(笑) モーニング娘。というひとつのカルチャーを通じてみんなが楽しめる、そんなサークルになればと考えています。


J・あえて否定をしないところが意味深ですね。

A・モーニング娘。の名前の由来は朝定食のように、気軽に楽しめるってとこから来ています。もともとクラスの人気者くらいの女の子が集まったってのが、つんくのコンセプトなんです。

 だいたい、最初の5人からして、鼻ピアス開けたのとか、既に24歳とか、一番しっかりしてるのが中学生とか、それで、名前がモーニング娘。でしょ?これが本気でNo1アイドルを目指して、ほんとになってしまった。その彼女達自身のストーリーが既にネタなんですよ。私自身も、その気軽に誰もが楽しめるというところが好きな理由なんで。みんなで理屈ぬきでネタを楽しめればいいかなと。


J・顧問があの金子勝教授(テレビ等に多数出演中の経済学部教授)というウワサを耳にしたのですが。

A・はい、本当です。金子先生に関しては前々からチェックしていました。授業中の雑談や著書にモー娘。の話がよく出てくるんですよ。もしかしてって思ってお願いしたら快諾してくださいました(笑) 5月の娘。のコンサートにも参加してくださったんですよ。


J・ちなみに金子先生はモー娘。のメンバーで誰が好きなんですか。

A・みんな好きみたいなんですけど(笑)、一番はあいぼん(加護亜衣)らしいです。


J・ところで、普段はどんなことをしているんですか?

A・「モー娘。ごっこです。」とかいう答えを期待されているかもしれませんが、もちろんそんなことはしてません(笑) 現在の活動内容としては月一でメンバー(モー娘。)の誕生会を兼ねたカラオケと、娘。のコンサートにみんなで行くくらいです。


J・そこだけ聞くと普通のオールラウンドサークルって感じですね。

A・良くも悪くも現状はそんな感じです。まあ、普通のサークルもバーベキューだの、海に行ったりだのすると思うんですけど、その共通して楽しむ、盛り上がる題材が娘。になっただけです。野球のサークルは野球で盛り上がる、バスケのサークルはバスケで、それで、私らは一番好きなのが娘。だったんで娘。で盛り上がれば良いやと。


J・メンバーはみんなやっぱりオタク系の方なんですか?


A・モーニング娘。のメンバー全員言えない人から、コンサートや握手会などに通算100回以上行ってるような人まで色々います。 みんな自分なりのスタンスで楽しんでますよ。


J・そういうスタンスの違いって問題にならないんですか?

A・それはあんまり無いですね。例えば野球サークルでも、大学に入ってはじめた素人から、高校時代野球部だった人までいたりしますよね? それで、高校時代野球部だった人が、大学に入ってから始めた人とか、ルールも知らない女子マネに、丁寧に教えてるじゃないですか。で、楽しくやってるうちにルールも知らなかった女子が、そのうち家でテレビを見る時、ドラマよりも野球中継にチャンネルを合わせて「あー今のバント上手いなー」と言うようになってる、、、それと同じ感じです。
 そんなわけで、とにかく、みんなでノリと盛り上がり重視でやっています。もし興味があるんならこの後、月例のイベントがあるので見に来てください。



というわけでご好意に甘えて、引き続きイベントに参加させてもらうことにした。

モー研。主催の「辻希美誕生会」は都内の某カラオケ店で行われた。集まったメンバーは総勢20人。待ち合わせ場所にやってきた彼らはアイドル研究会のメンバーにはとても見えない、いわゆる普通の大学生。驚いたことに(失礼)半数近くが女子である。

会場(カラオケ店の大部屋)に着くとメンバーはおもむろに机を動かし始めた。「えっ、歌いにきたんじゃないんですか?」困惑する編集部。あっという間に部屋の真ん中には謎のスペースが完成した。いったい何が始まるのか? 

しかしその疑問は、1曲目の「ザ☆ピース」が始まった瞬間吹っ飛んだ。曲が始まると同時に部屋の雰囲気が一転する。さっきのスペースはダンスフロアと化し、そこでモー研のみなさんが踊りまわっている。「ほーほらいこうぜ!」「そうだみんないっこうぜ!」完璧な合いの手つきだ!一糸乱れぬその様子はカラオケというよりはクラブ、といった感じである。

失礼ながら、正直ひいてしまった編集部。でもそれが2曲目の「Yeah めっちゃホリデイ」、3曲目の「ここにいるぜぇ」と続くと徐々にその怪しい空気に飲み込まれてしまった。「踊る阿呆に見る阿呆」なんて言葉があるがまさにその心境。同じアホなら踊らにゃな損だ。見よう見まねで踊ってみる。音と振りがビシッと合ったときの快感、みんなで掛け声をかける楽しさ、胸の中に妙に懐かしいワクワク感が湧き上がってくる。

なんだろうこの感覚..そうだ、お祭り、あの夏祭りの興奮が目の前に広がっているのだ。渋谷のカラオケボックスの中で!

極めつけはラストの「恋愛レボリューション21」、この曲、かなり振り付けが難しく、ナイナイの岡村さんがテレビで踊っているのを見て感心した記憶があったが、部員のみなさんはほぼ完全に踊っていた。 曲のラスト部分「この星は〜(なっち〜)、美しい〜(ごっちん)」の掛け声部分ではその場にいた全員が声を合わせ
る、感動すら覚えてしまった。

カラオケ終了後再度Aさんにインタビューすることができた。


J・すごいですね、本当に楽しかったです。いつもあんなに激しいんですか?

A・そうですね、メンツが変わっても内容はいつもこんな感じです。先ほどの通り、モー研って基本的にお祭り好きの集まりだと思うんです。結局私らはお祭り好きなんですよね。

 オタクと言われる人の中には、娘。のファンであることは罪でもあるかのように、振舞う人がいるんですよ。なんか、わざわざ自分達で恥ずかしい趣味だと思い込んでそう振舞うというか。まるで隠れキリシタンみたいに。でも、僕はそれは違うかなって思ってます。私ら別に悪いことしてるわけじゃないですし、堂々と好きなもんは好きと言ってれば良いと思ってて。

 だから、僕なんか合コンでもモームス研の代表って言ってますよ。そしたら、結構女の子の反応も良くて、1時間くらいは話題の中心だったり。別に恥ずかしいことじゃないんで、そういうのを超えて、みんなで一つの事を純粋に楽しみたいっていう。私らの場合はたまたまその媒介がモー娘。だっただけですよ。



 楽しいと思うことは人それぞれにある。例えばそれが野球であったりサッカーであったりモー娘であったり。しかし時には、それが一般的に認められないときもある。正直我々も取材前、モー研に対して偏見を持っていた。「怪しい」とか「キモイ」とかそういった類のものだ。でも取材を通して見えてきた彼らの姿はそういったネガティブなものではなく、「楽しいと思うことを純粋に楽しむ」というポジティブなものだった。残念ながら我々は大人になるにつれてそういった感情を失っていき、物事を純粋に楽しめなくなってしまう。世間体とか人の目とかそういったものを気にするようになる。それが当たり前のことなのか? 私はそんなのはいやだ。心から物事を楽しめないなんて悲しすぎるじゃないか。彼らを見てそんなことを思った。

 11月23日に三田祭で、私が体験した「祭り」を体験できるそうだ。心の底から楽しみたい人は、参加してみたらどうだろうか。もしそこで体が自然に動いてしまったら、周りを気にせず踊ってみることをおすすめる。


取材   阿部瑞穂



探偵!慶應スクープTOPへ | 慶應ジャーナルTOPへ