日吉キャンパスには、HAPP(Hiyoshi Arts and Performance Project)という制度がある。大学生はもちろん、生涯にわたっての「学習」の意味と可能性を考える機会を提供するため日吉キャンパスでの様々な学生企画を支援する制度である。まだ塾生内での認知度は低い制度であるが、この支援を得た企画が盛んに行なわれている。
11月には、HAPP制度を活用した企画『幽庭ーかすかばー』があるということで、慶應ジャーナルが取材を行った。
幽庭オフィシャルサイト:http://www.kasukaba.info/
HAPP:http://www.hc.keio.ac.jp/happ/
幽庭の取材が行なわれたのは日吉キャンパスの来往舎。雨の降る寒い平日の夕方、公演を2週間前にして、舞台稽古が行なわれているところだった。照明が光り出す暖かい光りの中に朗読師たちの発声練習の音、日本舞踊の音楽、バイオリンとチェロの音が混じっている。不思議な雰囲気を感じていたら、今回の企画の代表である島 充さん(文学部美術美学専攻4年)が現れた。稽古のためか、紺色の着物姿である。これじゃ来往舎ではなくまるで別の世界に来ている感覚の中、本格的な取材が始まった。
今回の幽庭のメインテーマとなるのが「日本文化」。考えてみれば、うちらがいつも接しているようであまり分かっていないのが日本文化だ。
「日本人に日本とは何ですかと聞いた場合、すぐ答えられる人って少ないと思います。もしろん浮世絵とか侍とか表面的な部分、いわゆる外からのイメージというのはみんなわかっているかもしれませんが、本当の日本、だから精神的な面とか文化の本質とか、そういう部分を大事にしていない感じがありますね。だからその部分を今回の企画でちゃんと再現して、お客さんにも本当の日本を感じていただきたいと思います。」
幽庭のメンバーたちがそのような考えを持ち、本当の日本を伝えるために選びに選んだのが、詩・音楽・舞踊・演劇・美術という五つの芸術。芸術という一つの枠には入っているが、五つ全てが含まれている公演とはとても想像がつかない。
「日本文化だと言って昔の物に甘えたくはないというのが強かったんですね。昔ながらの日本の感覚を受け続きながらも若い大学生たちの能力を最大限に発揮させたい。だからこそ、新しい事に挑戦すべきだと思いました。詩・舞踊・音楽・演劇・美術。全く違うジャンルの芸術かもしれませんが、同じイメージを表現するのであれば、絶対素敵な公演になれるはずだと思います。」
そう述べる島さんに強い自信感を感じられる。それでも、一人二人でもなく大人数のイメージを合わせるという事はとても大変だったそうだ。
「すっごく大変でした。本当やめようと思ったぐらい(笑)。でも、その過程の中でみんなが成長出来たと思えば、とてもうれしいです。」